2026年2月、三井不動産の企業CM「三井のすずちゃん」シリーズに、「東京ミッドタウン八重洲」篇が登場しました。
広瀬すずさん演じる「三井のすずちゃん」が友人たちと東京ミッドタウン八重洲を訪れ、施設の魅力を紹介します。いつものように三井不動産について熱心に語っていると、友人から「東京ミッドタウンって三井不動産なんだっけ?」と尋ねられます。すずちゃんは、以前にも教えたはずだと言わんばかりの反応を見せながら、「東京ミッドタウンも、三井不動産」と友人たちに繰り返します。
少し不思議な場面です。
このシリーズが始まったのは2022年7月。第1弾の舞台も、六本木の東京ミッドタウンでした。4年近くが経ち、舞台が八重洲に変わっても、三井不動産は同じことを伝え続けています。
なぜ、これほどまでに施設と企業名の関係を繰り返すのでしょうか。
その理由を考えると、三井不動産のコーポレートブランディングにおける重要な課題が見えてきます。本記事では、2022年から2026年までのシリーズ広告と関連施策をたどりながら、企業の経営方針、クリエイティブ、メディア展開がどのようにつながっているのかを読み解きます。
知っている施設と、知られていない企業
東京ミッドタウン、MIYASHITA PARK、日本橋、LaLa arena TOKYO-BAY、東京ドーム。それぞれの施設を知っていても、それらと三井不動産の関係をすべて説明できる人は、どれほどいるでしょうか。
三井不動産の事業は、オフィスや商業施設、住宅だけではありません。ホテル、スポーツ・エンターテインメント、海外での街づくり、新たな産業の創出など、多様な領域に広がっています。2026年版の統合報告書によると、2025年度の連結営業収益は約2兆7,097億円。事業は賃貸、分譲、マネジメント、施設営業、その他の5セグメントで構成されています。
一方、生活者が企業に接する場面は、こうした事業区分とは必ずしも一致しません。東京ミッドタウンを訪れる人は、そこで食事をしたり、買い物をしたり、展覧会を楽しんだりします。その体験が「東京ミッドタウン」という施設への評価には結びついても、三井不動産という企業の評価につながるとは限りません。
施設の知名度と、企業の知名度は別のものです。
広告主自身が示している課題
『宣伝会議』2025年3月号では、「三井のすずちゃん」シリーズの目的について、三井不動産グループおよび三井不動産の認知と好感度の獲得であると紹介されています。同記事には、企業のイメージと各事業の一致率が課題になっているという趣旨の見出しもあります。
同記事の公開部分だけでは、一致率の具体的な数値や測定方法までは確認できません。ただ、各施設の認知を企業ブランドの認知につなげたい、という問題意識は読み取れます。
ここで重要なのは、企業名を単に露出させることと、施設を通じて企業を理解してもらうことの違いです。「三井不動産」という名前を知っている状態と、「三井不動産は、こういう街や体験をつくっている会社だ」と理解している状態には距離があります。「三井のすずちゃん」は、その距離を縮めようとするコミュニケーションとして見ることができます。
個別の施設の認知を、
企業全体の理解へ
RELENSによるブランド構造の分析モデル
- 東京ミッドタウンオフィス・商業・文化
- MIYASHITA PARK公園・商業・ホテル
- 日本橋街づくり・歴史
- LaLa arenaスポーツ・エンタメ
- 東京ドームスポーツ・感動
- 宇宙関連事業新しい産業の創造
共通するコミュニケーションの仕組み
「三井のすずちゃん」
各施設や事業を、同じ語り手が紹介する
- 人物|広瀬すず
- 物語|友人との会話
- 音楽|名もなき詩
目指す企業認識
三井不動産
「さあ、街から未来をかえよう」
多様な事業に共通する、企業としての価値
タレントが広告の顔を務めることと、
異なる事業をつなぐ語り手になることは違う。
生活者が知っている個々の施設を、共通の人物・物語・音楽で紹介し、三井不動産という企業への理解につなげる構造。
※出典:三井不動産公式シリーズページ、統合報告書2026をもとにRELENS作成。認知向上の実測結果を示すものではありません。
個々の施設で生まれた認知や体験を、三井不動産という一つの企業ブランドへ結び直す。シリーズ全体に共通する構造は、ここにあります。
「三井不動産になぜか詳しい人」という語り手
2022年7月に始まった「三井のすずちゃん」は、一般的な企業紹介CMとは少し違います。主人公は、三井不動産の社員でも、企業を代表する広報担当者でもありません。友人たちと街を歩きながら、なぜか三井不動産のことになると熱心に説明し始める人物です。
第1弾の「東京ミッドタウン」篇では、すずちゃんが施設と三井不動産の関係を説明し、その詳しさから友人たちに「三井のすずちゃん」というニックネームを付けられます。この設定には、企業広告の伝え方として興味深い特徴があります。
企業が語るのではなく、生活者が語る
企業が自社の事業について説明すると、どうしても宣伝として受け取られやすくなります。しかし、友人同士の会話の中であれば、同じ内容も違った印象になります。
すずちゃんは、視聴者より少しだけ企業に詳しい人物として登場します。そして友人たちは、三井不動産について必ずしも詳しくありません。その友人の反応は、視聴者の立場に近いものです。施設を知っている。訪れたこともある。でも、それが三井不動産の仕事だとは意識していなかった。この認識の差が、シリーズの会話を生み出しています。
同じ人物が、異なる事業を語り続ける
もう一つの特徴は、シリーズが連続ドラマとして設計されていることです。制作に携わった電通のコピーライター・岩田純平氏は、シリーズを朝ドラのような企画として構想したことを説明しています。
実際、広瀬すずさん、友人たちとの掛け合い、Mr.Children「名もなき詩」のカバー楽曲といった要素は、作品が変わっても繰り返し登場します。変わるのは、舞台となる施設や伝える事業の内容です。東京ミッドタウンの話が終われば、次はMIYASHITA PARK。その次は日本橋やオフィス、スポーツ、宇宙へと話題が広がっていきます。
もし作品ごとに出演者や世界観を変えていたら、各作品を個別の企業広告として理解することはできても、シリーズ全体のつながりは弱くなっていたかもしれません。共通の語り手が存在することで、異なる事業を取り上げても、視聴者には「いつもの三井のすずちゃん」として受け取れる余地が生まれます。個々の広告を記憶するための手掛かりを共通化し、企業の多様な事業を一つの物語に収めている、と解釈できます。
もちろん、これだけでブランドの記憶定着が実証されたわけではありません。しかし、複数の事業を持つ企業にとって、ひとりの人物と同じ世界観を継続させることには、こうした設計上の意味があります。
2024年を境に、伝えるものが変わり始めた
「三井のすずちゃん」を時系列で眺めると、もう一つ興味深い変化に気づきます。
2022年から2023年にかけての作品では、東京ミッドタウン、MIYASHITA PARK、日本橋、オフィスなど、生活者が具体的にイメージしやすい施設や事業を紹介する内容が中心でした。
その後、2024年4月に三井不動産は新たなグループ経営理念と長期経営方針「& INNOVATION 2030」を公表します。同時に、新しいコーポレートメッセージ「さあ、街から未来をかえよう」を掲げました。長期経営方針では、従来の不動産事業を成長させるだけでなく、スポーツ・エンターテインメントなどの新たなアセットクラスや、新事業領域の探索も打ち出しています。
その翌日、4月12日に公開されたのが「宇宙」篇でした。
宇宙と不動産は、どうつながるのか
「宇宙」篇では、日本橋における宇宙関連産業の取り組みが紹介されます。一般的に、不動産会社から連想しやすいのは建物や街の開発でしょう。宇宙産業は、一見すると遠い存在に感じられます。
しかし、三井不動産はこの作品について、新長期経営方針の一つの軸である産業創造をテーマにしたものだと説明しています。つまり、企業が進もうとしている事業領域を、すずちゃんという既存の語り手を通じて紹介しているのです。
それ以前の作品が施設と企業名の関係を知ってもらうことに重きを置いていたとすれば、宇宙篇では「三井不動産はどこまで事業を広げようとしているのか」という、より大きな企業像にも踏み込んでいます。
2024年6月の「LaLa arena」篇、同年7月の「オリパラ」篇、2025年の「東京ドーム」篇や2026年の「スーパープレイ」篇では、スポーツの力を生かした街づくりが描かれています。2025年の「経年優化」篇では、建物を完成させて終わりにするのではなく、時間をかけて街の価値を高めていく考え方を紹介しました。同じ年の「ニューヨーク」篇は、海外での街づくりを題材としています。
これらの作品は、三井不動産の事業戦略や街づくりの理念と対応しています。ただし、2024年以前からスポーツや住宅など幅広い事業を扱っていたことにも注意したいところです。シリーズが突然別の広告に変わったわけではありません。
変わったのは、従来の施設紹介を続けながら、経営方針や企業が目指す姿との関係が、以前よりも読み取りやすくなったことです。
企業メッセージを、一つずつ具体化する
「さあ、街から未来をかえよう」という言葉だけを聞いて、三井不動産の事業を具体的に想像するのは難しいでしょう。そこで、宇宙産業への挑戦、スポーツの力を生かした街づくり、時間とともに価値を高める日本橋、海外での開発といった取り組みが意味を持ちます。抽象的な企業メッセージに対して、個々の事業が具体例になるからです。
この構造を広告コミュニケーションの側から見ると、企業理念を説明するための動画を1本制作するのではなく、既存シリーズの中で少しずつ紹介し続けているように見えます。同じ人物が、異なる事業の意味を語る。その積み重ねによって、三井不動産の企業像をより具体的にしていきます。
もちろん、どの事業をどの順番で取り上げるかまで、経営方針に基づいて計画されたと確認できる資料はありません。ただし、2024年以降の作品と経営方針には、明確な対応関係が見られます。
施設の紹介から、
経営方針を伝える表現へ
2022〜2026年の主要な展開
2022–2023|施設・事業を知ってもらう
- 2022年7月シリーズ開始。東京ミッドタウン篇。新聞の連続広告小説やコーポレートサイトでも展開。
- 2022年12月〜2023年MIYASHITA PARK、日本橋、三井のオフィスなどを紹介。ラジオでは「経年優化」「&マーク」を取り上げる。
2024.04.11|経営方針の節目
新経営理念・「& INNOVATION 2030」発表
コーポレートメッセージ「さあ、街から未来をかえよう」
2024–2026|企業理念・事業戦略との接続が明確に
- 2024年4月宇宙篇。新事業領域・産業創造の取り組みを紹介。社長との対談動画も公開。
- 2024年6〜7月LaLa arena篇・オリパラ篇。スポーツ・エンターテインメントと街づくりを結びつける。
- 2025年経年優化篇・ニューヨーク篇・東京ドーム篇。街の価値向上、海外展開、スポーツ・エンタメへとテーマが拡大。
- 2026年東京ミッドタウン八重洲篇・スーパープレイ篇。初期作品とのつながりを維持しながら、スポーツによる街づくりも発信。
RELENSの分析
Constant変わらないもの
- 主人公
- 友人関係
- 音楽
- シリーズの物語
Evolving変わってきたもの
- 紹介する事業領域
- 企業戦略との接続
- メッセージ
※出典:2022〜2026年の三井不動産ニュースリリースをもとにRELENS作成。代表的な作品を抜粋した年表です。2024年を境にすべてが変わったという意味ではなく、一貫性を保ちつつ、伝える事業や企業像が拡張されたことを示しています。
テレビCMの外で、すずちゃんは何をしているのか
「三井のすずちゃん」の統合コミュニケーションを考えるうえで、TVCM以外の接点も確認しておきます。調査で確認できたのは、テレビ、デジタル動画、新聞、ラジオ、コーポレートサイト、X、PRなどです。ただし、すべての媒体が独自の役割を持ち、緻密に連携しているとまでは言い切れません。
テレビとデジタル動画:同じ物語への接触を広げる
TVCMは基本的に30秒を中心に展開され、作品によって15秒版や60秒版も制作されています。また、各作品には6秒のデジタル広告やメイキング動画などが用意され、近年は縦型の短尺動画も展開されています。
『宣伝会議』の取材記事では、テレビからTVerなどのデジタル媒体へ活用を広げ、リーチの拡大に取り組んでいることが紹介されています。これは、テレビとデジタルを組み合わせて接触機会を広げる取り組みとして理解できます。
ただし、媒体ごとに異なるメッセージを伝えているか、視聴者の接触状況に応じて配信内容を変えているかまでは確認できません。同じ物語を多くの人に届けることと、媒体を横断して顧客体験を設計することは、区別して考える必要があります。
新聞:テレビの物語を別の形式で展開する
シリーズ開始時の2022年には、日本経済新聞で連続広告小説が掲載されました。7月7日、15日、23日の3回にわたり、テレビCMと共通の世界観を使った作品が展開されています。
ここで興味深いのは、テレビCMの内容をそのまま紙面に置き換えたのではなく、新聞では小説という形式を採用した点です。連続ドラマという企画の特徴を保ちながら、新聞という媒体に合わせて表現方法を変えています。
ラジオ:映像で扱いきれない理念を補う
2023年には、TOKYO FMの番組内で広瀬すずさんによるラジオCMが放送されました。テーマは「経年優化」と「&マーク」。いずれも、施設の外観を見せれば伝わるものではなく、企業の街づくりに対する考え方や理念に関わる内容です。
ラジオでは、すずちゃんの声という共通要素を使いながら、映像とは異なる情報を伝えています。特に「経年優化」は、後の2025年にTVCMのテーマにもなりました。ここには、媒体と時期をまたいで一つの考え方を伝え続けるという連続性が見られます。
Webサイト:広告から事業理解へつなぐ
コーポレートサイトでは、「三井のすずちゃん」のシリーズ作品がまとめられています。各作品の紹介に加えて、関連する事業や施設のページへ進める構造が用意されています。動画の中で紹介された宇宙関連事業やスポーツを活用した街づくりについて、さらに情報を得られる。広告によって生まれた興味を、企業理解につなげられる設計です。
X:作品の公開やシリーズの連続性を伝える
2026年には、三井不動産の企業公式Xアカウントでシリーズに関連する投稿が確認できます。新作の公開告知だけでなく、次の作品を予告するような投稿も行われています。テレビCMでおなじみの物語を、SNS上でも継続して伝える試みと捉えられます。
ただし、Xの本格的な活用は比較的新しく、投稿件数や公開情報から判断する限り、シリーズ全体の主要なコミュニケーション基盤だったとは言い難いでしょう。
共通する物語が、
複数の顧客接点へ広がる
施策の実施状況と、想定される役割を分けて整理
企業戦略・コミュニケーション上の目的
三井不動産の認知・好感度、事業との結びつき
多様な事業を企業ブランドとして伝える
共通するコミュニケーション資産
「三井のすずちゃん」の物語
主人公・友人・楽曲・企業名を伝える会話
確認できた展開先と、推定される役割
- テレビCM幅広い認知・物語への接触30秒を中心に、15秒・60秒版も
- デジタル動画短尺接触・リーチ補完6秒版・縦型・TVer
- 新聞物語の拡張・接点の追加日経の連続広告小説(2022年)
- ラジオ理念や考え方の補足経年優化・&マーク(2023年)
- 公式Webサイト事業内容への理解を深めるシリーズページから関連事業へのリンク
- 公式X新作告知・シリーズ継続2026年の関連投稿
- PR・広報施策内容・背景の周知公式リリース・取材記事
- 対談コンテンツ経営方針への理解広瀬すずさん×社長(2024年)
期待される生活者への変化
企業認知 → 事業理解 → ブランド好意
実際にどこまで変化したかは未確認
Confirmed確認できたこと
- 共通する表現(人物・物語・楽曲)
- 複数媒体への展開
- Web上の事業への導線
- 経営方針との接続
Unconfirmed確認できないこと
- 媒体別のKPI
- 接触順序の設計
- 広告効果
- 認知・好感度の変化
※出典:公式ニュースリリース・シリーズページ・宣伝会議・AdverTimesをもとにRELENS作成。媒体の役割はRELENSによる解釈であり、広告主の公表したメディアプランではありません。矢印は概念上の関係を示し、実際の接触順序や因果を実証するものではありません。
統合されているのは、何か
ここまで確認すると、「三井のすずちゃん」には二つの統合があると考えられます。
一つ目は、表現と物語の統合です。広瀬すずさん、友人との関係性、共通の楽曲、三井不動産の話になると熱心になるキャラクター。これらの要素によって、多様な事業を同じシリーズの中で紹介できます。
二つ目は、媒体間の連携です。テレビ、デジタル、新聞、ラジオ、Web、Xなど、複数の接点で関連するコミュニケーションが行われています。
ただし、後者については、媒体ごとの戦略的な役割分担や接触後の行動まで設計されていたことを示す資料が十分ではありません。そのため、「三井のすずちゃん」をIMCの完成された成功事例として評価するのは早いでしょう。むしろ、この事例からは、共通の物語を維持することと、顧客接点を統合的に設計することの違いを学べます。
企業の代名詞になることの、もう一つの意味
同じキャラクターで企業の事業を繰り返し紹介する方法には、別の側面もあります。キャラクターと企業名の関係が強くなるほど、そのキャラクターは企業の印象を代表する存在になっていきます。
今回の調査では、X上で、個別の施設に関する話題や批判に「三井のすずちゃん」を結びつける投稿も確認されました。SNS上の一部の投稿であり、企業全体への評価を代表するものではありません。ただ、ブランドコミュニケーションを考えるうえでは無視できません。
企業広告では、個々の事業を一つの企業ブランドに結びつけようとします。その関係が形成されれば、施設での好ましい体験が企業の評価につながる可能性があります。同時に、施設や事業に対する不満も、企業全体の評価に影響する可能性があります。
企業ブランドと事業ブランドの結びつきを強めることは、肯定的な印象だけを集める仕組みではありません。広告がつくる期待と、実際に提供される体験が一致しているか。企業ブランドの認知が広がるほど、コミュニケーションの外側にある事業運営やサービス品質も重要になります。
では、この広告は成功したのか
「三井のすずちゃん」は2022年の開始から継続し、2026年にも新作が公開されています。しかし、シリーズが長く続いていることをもって、広告効果が高いと結論づけることはできません。
今回確認した公開資料からは、企業認知率、ブランド好感度、施設と企業名の一致率などについて、シリーズ開始前後を比較できる十分な定量データは得られませんでした。また、どの媒体に接触した人が、その後どのように企業を認識したのかという分析結果も確認できていません。
本来、この取り組みの成果を評価するなら、例えば次のような指標が必要になるでしょう。
- 三井不動産という企業名の認知率
- 各施設と三井不動産との関係を正しく認識している割合
- 広告接触前後のブランドイメージや好感度の変化
- 施設単位ではなく、企業全体の事業理解の変化
- 媒体の組み合わせによる認知・理解への追加効果
これらを確認できなければ、狙いに対してどこまで成果が出たかは判断できません。
一方で、公開情報だけでも読み解ける設計の特徴はあります。知られている施設を入口に、企業名を繰り返し伝えること。共通のキャラクターと物語を通じて、異なる事業を一つの企業像へまとめること。そして、経営方針の変化に合わせて、シリーズで扱うテーマを広げていることです。効果の実証とは別に、これらはブランドコミュニケーションの設計として考察する価値があります。
複数の事業を持つ企業が、この事例から学べること
「三井のすずちゃん」が扱っている課題は、不動産会社だけに限りません。複数の事業やサービスを持つ企業では、個々の商品やブランドが知られていても、企業全体として何を目指しているのかが伝わりにくいことがあります。
企業ブランドの認知を高めようとすると、コーポレートメッセージを広告で繰り返したり、事業を一覧で紹介したりする方法が考えられます。しかし、それだけで生活者が個々の事業とのつながりを理解できるとは限りません。
三井不動産の事例から考えたい、
4つのこと
※広告主が公表した方針ではなく、本記事の分析をもとにRELENSが整理した視点です。
おわりに|変わらないものと、変えるもの
2026年の「東京ミッドタウン八重洲」篇で、すずちゃんは改めて企業名を友人たちに教えています。シリーズ開始時から、伝えたいことの中心は大きく変わっていません。しかし、その間に三井不動産の事業は新しい領域へと広がり、企業が掲げるメッセージも変わりました。
一つのシリーズの中で、変わらないものと、変えるものをどう設計するか。
「三井のすずちゃん」は、個々の広告表現ではなく、企業が伝えたい価値を長期的に積み重ねていくコミュニケーションのあり方を考えるための事例と言えるでしょう。
参考文献・出典
本記事は2026年10月15日(調査基準日)までの公開情報に基づくRELENS独自の分析です。企業の公表事実と編集部による解釈を区別し、非公開の戦略や広告効果を断定していません。
- 三井不動産『「三井のすずちゃん」シリーズ公式ページ(新しいタブで開きます)』
- 三井不動産『「三井のすずちゃん」第1弾 ニュースリリース(新しいタブで開きます)』(2022年7月5日)
- 三井不動産『新グループ経営理念・長期経営方針(新しいタブで開きます)』(2024年4月11日)
- 三井不動産『「宇宙」篇 ニュースリリース(新しいタブで開きます)』(2024年4月12日)
- 三井不動産『「東京ミッドタウン八重洲」篇 ニュースリリース(新しいタブで開きます)』(2026年2月17日)
- 三井不動産『「スーパープレイ」篇 ニュースリリース(新しいタブで開きます)』(2026年6月11日)
- 三井不動産『統合報告書2026(新しいタブで開きます)』
- 宣伝会議『テレビからTVerの活用にも広がり3年目(新しいタブで開きます)』(2025年1月29日)
- AdverTimes『広瀬すずが『三井のすずちゃん』(新しいタブで開きます)』(2022年7月27日)